1

1

1

THE VICINITY OF IZUMO

2024年1月6日土曜日

「野良番内」はいずこへ

正月3日、各町内会ごとに出雲大社本殿前など数カ所で幟(のぼり)を立て神謡をうたって無病息災を祈る「吉兆さん」、そして鬼(神様)の面と華やかな神楽衣装を着けた「番内さん」、いずれも地元大社町の新年を彩る風物詩です。ところでその番内さん、今では大多数が御幣を手にして吉兆さんを先導する町内会専属の大人しい人?だけになり寂しい限り、ワタシが子供の頃は単独行動で青竹を振り回す個人参加の番内さんがやたら多くみられ、それはそれで正月には無くてはならない存在でした。ここではそんな個人参加の番内さんを、敬意をこめて「野良番内」と呼ぶことにします。

どうも当時は出雲大社で面や衣装を貸し出していたみたいですが、特に傷んだ面や色褪せた衣装は格安で提供されていてそんなのを借りるのはだいたい20代から30代前半の若者。そしてそれを身に着けた野良番内を地元の子供たちは離れた所から「クソバンナ~イ!!」って煽り、かなり酒が入った番内の方もクソガキにおちょくられたもんだから「ウオ~~!!」って追いかけてきたりして、もうこうなったらお互い楽しんでます。

まあ別に野良番内は子供と追いかけっこするのが仕事ではなく、家々を周って「アクマンバラ~~イ!!(悪魔祓い)」って叫びながら太い青竹で玄関の土間などを思いっきり叩き、その家の厄を祓うのが本来の業務。そのまま玄関先でカマボコとか湯のみ茶碗に注いだ冷や酒とかのもてなしを受け、益々パワーアップして次の家へ向かうワケです。中には3~4人つるんで行動するチーム系野良番内もいましたが、人数が多いだけに子供もビビッて煽ったりはしませんでした。

そして午後3時くらいになると野良番内の中でも特にクソバンナイ達は完全にヘベレケ状態になり、最初1本だった青竹もあちこち叩き過ぎたため縦に裂けて6本ぐらいになり、それを2つに分けて両肩に乗せ、頭の後ろでクロスさせてフラフラ歩く姿はそこはかとなく哀愁が漂っていて逆にカッコ良く、今でもその光景が鮮やかに蘇ります。今回は懐かしくも今ではなかなか見ることの無い野良番内のハナシでした。

ついでに
40代の頃、頼まれて町内会専属の番内をやったことがありますが、そこにはお約束のギャグが二つあり・・・

一つ目
観光で来た若い女性達から「一緒に写真を撮ってください」って頼まれますが、わざとに「面を取りましょうか?」って聞いたら「イヤ、そのままでお願いします」って言われるやつ。

二つ目
吉兆さんの先導も終わりくつろいでいる時、既に面を取っているのにもかかわらず「おい、もう面を取ってもいいで!!」って言われるやつ。 以上です。


ウチの家宝である平野薫画伯の絵、一番手前に「番内さん」が描かれています。