昭和の時代大社町内ではデラウエア種のぶどう栽培が盛んで、夏の収穫期を迎えると2箇所ある集荷場から全国に向けて出荷されていましたが、見た目が悪かったり実が取れたりして商品にならないものは加工用としてこのワイン工場に持ち込まれていました。そしてその時期そこで働いていたのはワタシを入れて6~7人、工場があったのは旧JR大社駅の用水路を挟んだ東側、今の島根ワイナリーとは全く別の場所でした。
で、ワタシ当然ワイン造りなど初めてなので全く知識も無かったんですが、当時やった作業はそこまで複雑な感じでもなかったので記憶にある限り書き出してみると・・・
機械でぶどうをヘタと実に分ける 作業快適度★★★
2人で高い台に乗ってコンテナに入ったブドウを次々とホッパーに投入していると、何だか密造酒を作っているみたいな感じで楽しかったです。海外の動画にある足でブドウを踏んだりみたいなことはしません。
皮と実だけになったぶどうを発酵槽に入れる 作業快適度★★★
太いホースが付いたポンプで工場内に複数あるコンクリート製のデカい発酵槽に送り、数日間発酵させます。この頃から生成されるアルコールのせいか、工場全体が良い香気に包まれ出します。
発酵させた後の皮と実を絞る 作業快適度★★★
「舟」と呼ばれる幅1m、奥行2m、深さ1.5mぐらいのコンクリート製の槽に発酵した皮と実をポンプで送り込み、手でこぐタイプの油圧プレスでそれを絞ります。絞った果汁は下に敷いたスノコを通り、さらに深いところに置いた桶に貯まっていきます。
搾りかすを捨てる 作業快適度★
次の絞りのために「舟」から搾りかすをシャベルで取り出し、工場の横庭に捨てに行きます。言ってみればこれが一番の重労働でした。
タンクの洗浄 作業快適度★★★★★
醸成室にズラッと並んだ高さが2m以上ある空の琺瑯製タンクに入ってこれを洗います。正しく醸成が行われるように部屋全体がかなり冷やしてあり、もう天国のような環境下での作業。体温がかなり上昇してきたタイミングでこの作業が入るので余計に快適でした。
後は絞った果汁をポンプでこのタンクに送って醸成させますが、ワタシこれから先の作業には参加していません。ただここからがおいしいワインを造る一番カナメの工程だと思います。出来上がったワインはこの先濾過、瓶詰、出荷となるようです。
残業の後 食べる作業快適度★★★★★
なんだかワイン造りの工程を書いただけみたいになっちゃいましたがついでに書くと、ワタシがバイトしたこの時期はワイン工場にとっても年間を通して一番の繁忙期です。そしてそのせいかどうかはわからないけれどまだ明るいうちに終わる残業が何度かあり、その都度夜食と称して大社駅の駅前にあった食堂で「ウナ重」をいただいてから解散となりましたが、そのウナギの美味しかったこと。なんだかみんなにこれを食べさせるため無理やり残業があった気もしますが、それも経費のうちだったんでしょう。この頃まだ大社線は廃止前で「急行大山」や「急行大社」などの優等列車が大社駅に乗り入れていました。
デラウエア種ってアメリカのデラウエア州原産だとばっかり思っていましたが、実際はオハイオ州デラウエアが原産だそうです。